脳科学の本を読みました。
フルートの練習とは全く関係のない分野ですが、そこに面白いことが書いてありました。


新しいことを覚えようとするとき、無意識に既知の経験に置き換えて解釈している


スポーツや勉強など、新たに習得したいと思っていることに取り組むとき、自分がすでに知っている概念に変換して考えようとすることが、習得の妨げになるというのです。

例えば、野球の得意な人が新たにバスケットボールを習得しようとするときに、無意識のうちに自分の経験したもの(この場合は野球)になぞらえて自分なりに解釈を変えながら習得しようとするそうです。

これがすべての問題の始まりで、他の概念に変換しながら習得しようとすると、いつまで経っても上達しません。


ここで、まっさらな状態でバスケットボールを習得する場合は、何もなぞらえるものがありませんから、何の解釈の変換も必要なく、すっと脳に入って習得できるようになるそうです。

この状態のバスケットボールの習得レベルは、もはや「ネイティブ」であり、もっとも自然な状態を維持できることになります。


語学も同様で、日本人が英語を習得しようとするとき、ほとんどの人は英語を日本語に変換して理解しようとします。これがそもそもの間違いで、英語の本当の意味は英語でしか理解できないため、無理に変換して解釈しようとする試み自体がおかしいということです。


フルートの演奏技術の習得に置き換えると


フルートに置き換えて考えた場合どうでしょうか。

私は楽器経験はフルートが最初ですから、楽器の演奏という意味では他の楽器になぞらえたりはしていません。

しかし、楽器の操作感覚を PC のキーボードに例えてみたり、楽譜を音階で覚えようとしたり、無意識のうちに「自分の分かる知識」に変換して覚えようとしています。


楽器の演奏そのものを他の楽器になぞらえたりはしていませんが、習得方法を他のことで置き換えているということはかなりありそうです。

フルートはフルートなのです。
ヴァイオリンでもなければ、ピアノでもない。フルートでネイティブに、フルートで自由に表現できるようになりたかったら、既知の経験に置き換えずにまっさらな状態で取り組まないといけないということです。

本では英語を本当の意味で理解できるようにすることを「英語脳を作る」と呼んでいるので、フルートでは「フルート脳を作る」ということになりますね。



既知の経験に置き換えずに習得する方法


本の内容によると、新しく習得しようとすることをまっさらな状態で吸収するために、自分の中で脳内イメージを徹底的に作り込むことがよいそうです。

それには、その分野で目標とする人になり切ってしまうイメージをする必要があります。
具体的には、バスケットボールならバスケットボールのスタープレイヤーの動画を1日何時間も見続け、理想的なフォームやプレイ内容を染みこませること。

フルートで言えば、目標としている演奏者の演奏動画をひたすら見続け、脳内イメージではその演奏者に完全になり切るくらいのイメージを構築してから練習に取り組むということになりますね。


ここでいうなり切るイメージというのは、強烈に具体的なレベルにまで落とし込んだ、極めて再現性の高いレベルのイメージです。
吹いている楽器の重さや室温、指の感覚からにおいなどに至るまで、ありとあらゆることを深くイメージしていつでも取り出せるくらいにまで具体的なものに落とし込むこと。

まさにイメージトレーニングですね。


この具体的なイメージ作りを追求し続けることによって、「フルート」で「フルート演奏」を考える意識ができるということです。


ただ楽器を持って毎日吹いていれば練習になるかというと、そうでもありません。

私たちは毎日何時間も頻繁に練習時間を確保できるわけではないので、こういったイメージトレーニングを使って練習することを考えたほうが良いのかもしれません。


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