ブリチャルディキーの有用性についてのエントリーを見つけたので、私も思うことを書いてみます。
ところが、このずらすという動き、トロいんです。H→B→Hという半音の動きの時にブリチアルキーを使うと、まるでポルタメントのように「うにゃー」という音になることが多いんです。そういう音が出したければ、それを使えばいいんですが、それがだめな時はブリチアルキーは使えません。もっとも中高生の中には、このH→B→Hという半音の動きをすばやく動かす練習をしていたりする人もいますが…。
私はブリチャルディキーは、あまり「ずらす」という方法で使っていないので、この悩みはよく分かりませんでした。実は先生にも、ブリチャルディキーを使うときは左親指を左に「ずらす」と教わったのですが、先生と私では親指の長さが随分違うので、親指の先を上に向けて押さえています。ブリチャルディキーは、トーンホールを塞ぐカップに伸びるアームの部分をいい感じに押さえられるので、カップを直接押さえる操作をしていません。
これについては、以前のtomomi-alooohaさんのエントリーにも同じようなことが書かれています。(これは大変参考になります)
また、アルテスには、ブリチャルディキーの使い方として次のような説明があります。
このキイの使い方はごくやさしいが、次の三つは必ず守ってほしい。
(1)ブリチアルディキイの上に左親指をすっかりのせてしまわないで、親指を左にねじって押える。はずす時には、すべらすのではなく、ねじり戻すのである。
(2)高オクターブに移る場合にこのキイから指を外す機会があるときは、高オクターブの間中なるべくこのキイを持たないくせをつける。
(3)このキイをはずしてB・Hと上昇したり、このキイでH・Bと下降してはいけない。
フルート教則本アルテス1巻(p.73)
アルテスの解説だと、指をずらして(滑らせて)使わないようにと書いてあります。
また例示の「H→B→H」をこのキーでやるな、とも書いてありますね・・・。
つまり、ブリチアルキーを使う必要はどこにもない訳です。なんで付いているんでしょうねえ…。Eメカよりも必要性がないと、笛師匠は言っていました。このブリチアルキーを使うと、Fdurがやりやすくなるだけの、いわぱ「初心者」のためのキーなのです。♯系の曲は使いません。♯系と♭系の曲を交互に演奏するとか、臨時記号が頻繁に出てくるような曲になると、もう使えませんから、最初から使わずに練習した方が良いのです。私は、笛師匠から、ブリチアルキーは絶対使わないようにと教わりました。右手人差し指で、Fのキーを押せば、こと足ります。
(中略)
このBキーは♯系の曲には、まず使いません。♯系と♭系の曲を交互に演奏するとか、臨時記号が頻繁に出てくるような曲になると、もう使えませんから、最初から使わずに練習した方が良いのです。
私はまったく逆で、先生には必要なときには積極的に使うように言われました。
Eメカは、それが存在することによって音が変わるという話もあるので、ない方がよいのかもしれません。
古い有名な教則本、アルテスの邦訳には、次のような訳者解説がついています。非常に興味深い内容です。
タファネル・ゴーベールも、このアルテも、有名な教則本のほとんどが、中等以上の技術になるまでブリチアルディキイの使用を禁じ、(1)の運指(※Bの正規の運指)で練習するように書かれているのである。しかし、このブリチアルディキイは運指が楽で音色もよく、正しい使い方をすれば非常に便利なキイだから最近では、割合早くからこのキイを使わせるようになってきた。
アルテは、三巻の初めにこのキイの簡単な解説を書き、非常に便利なキイだから三巻以後はなるべくこのキイを使うように、といっている。
しかし、三巻までこのキイを使わせないのはどうかと思われる。この便利だが欠点のあるキイを上手に使いこなす練習もまた、きわめて必要だからである。
つまり、この二種の運指は、どちらも完全にでき、そのときに応じて使いよい方を用いなければならないが、まず覚え、より多く練習する必要があるのは、絶対にむずかしい方の(1)の運指だということは明らかである。
フルート教則本アルテス1巻(p.55)
ブリチャルディキーを使って練習する時期についての記述はあっても、不要であるとは書かれていません。有効に使うべきと書かれています。
替え指の件でこのブログでも色々意見を頂きました。私の先生も使えるものは使うべきというスタンスでした。
現代のフルートではオプションでもないこのキーは、必要だからついているのであり、「初心者のためのキー」と切り捨てるのはやはり違和感がありますね。
2009/08/04 元エントリーが訂正されたため、引用箇所を改めました。
フルート関連のブログ
こんな便利で他の機能に悪影響を与えないメカもないと思うのですが、世の中にはこのキーを忌み嫌うセンセイもいて、使い方すら教えてもらえない生徒もいるかもしれません。
もちろん右手人差し指を使う他2つのフィンガリングとあわせて、どれも同じように使いこなせなければなりませんが。
ちなみに僕のCouesnon(Sankyoのコピーモデルも)にはそのうちの一つ、Aisレバーがありません。その代わり・・・にはなりませんがCisトリルキーがあります。MOYSEはたぶんその両方が隣り合って付いていると、押さえ間違いが起きることを避けてAisレバーなしとしたのではないかと想像しています。
こういうモデルを持つ前は、けっこうAisレバーを使っていたので不安でしたが、無いとなると意外にストレス無く対応できました。
ブリチャルディーキーはそういうわけには行きません。これが無いフルートは考えれない!